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疫学と医療統計学と遺伝学と時々、大学院生活

疫学を専門とする大学院生の研究に関する備忘録的ページ。

アメリカにおける個人の遺伝子検査サービスに関する消費者の意識調査

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今回は、文献の紹介をするとともに、個人の遺伝子検査サービス前後で消費者の意識がどのように変わっているかを紹介したい。論文のタイトルはDirect-to-Consumer Genetic Testing: User Motivations, Decision Making, and Perceived Utility of Resultsである。Direct-to-Consumerというのは消費者直結ということで、消費者が直接手に入れ、実際に検体を取ることを意味する。近年は、日本においても幾つかのDTCの遺伝子検査サービスが普及している。主にYahoo!ヘルスケアの提供する「Health Data Lab」(URL:https://medical.yahoo.co.jp/hdl/)やDeNAライフサイエンスが提供する「MYCODE」(URL:https://mycode.jp/)などが挙げられる。日本よりも先んじてアメリカでもこのようなサービスは普及している。実際にこのようなサービスを受けているアメリカ人はどんな属性(特徴)の人なのか、そして彼らはこのサービスをどのように捉え、サービスの結果によってどのような影響を受けたのか論文の中から探っていく。

論文の要旨

2013年のDirect to consumer(以下: DTC)つまり、消費者直結型の個人遺伝子検査サービスに対する規制に先立って、2つの主要なサービスの1648名の消費者がサービスの結果を受ける前後にWebアンケートに回答した。

  • 検査を受ける前に、消費者が興味を持っていた項目は、先祖(74%)、形質(72%)、疾患リスク(72%)であった。
  • 疾患リスクに関しての興味は、女性健康状態の良くない人(自己申告)と有意な関連があった(p<0.01)。
  • 多くの消費者(38%)は、サービス購入前に望ましくない結果を得る可能性について考えていなかった。この集団には高齢の男性が多く、それほど教育歴が高くない人が含まれていた(p<0.05)。
  • 結果を受け取った後は、59%の人が検査結果は彼らの健康マネジメントに影響すると答えた。また、2%の人はテストを受けたことを後悔し、1%の人は結果から悪影響を受けたと報告した。


DTCの遺伝子検査サービスは健康関連の情報を提供しているが、一方で医学的でない情報に対して消費者が大きな興味を示していることが論争を引き起こしている。多くの消費者は検査前に潜在的な問題を完全には考慮しないが、DTCの遺伝子検査サービスは一般的には将来の健康に関する決定に有益であると捉えらえている。

論文で議論されている事柄

1. 女性、白人、高い社会的な地位が健康に高い関心を示している(Table2)
この研究のサンプルは、USの一般的な集団と比較すると女性、白人、高い社会経済的な状況にある人が多かった。さらに、健康保険に加入しており、喫煙しない傾向や肥満ではない傾向であった。これは社会的に高い地位と健康への関心を反映していることがわかる。一方で、この違いにも関わらず、この研究参加者と比較して、自己報告の健康状況やガン検診受診行動にはあまり変わらないことは面白い。

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2. 医学的なリスクよりも祖先や形質への興味(Table3)
一般の検査サービスに対して、参加者は祖先や形質に関心があることがわかる。他方で、pharmacogenomicsに関しては「とても関心がある」と答えた人は52%であった。また、キャリアであるかにしては31%であった。薬の副作用は個人的にはかなり重要なもので、個別化医療の現実を考えるとこの分野に興味があってもおかしくはないと考えていたが、実際は薬を飲んでいなかったりすると、興味はないのかもしれない。

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3. unwanted informationへの考慮
この研究でテスト実施前に多くの事柄(利便性など)を考慮していることが明らかになった。しかしながら、ここには「このテストを受ける決定に際しては、すべて(潜在的なリスクや限界)を考慮している状況ではない」という一つの問題を提起している。返答者の40%はリスクについては事前に考えていなかった。

4. overrated(over-estimatedな)評価
多くの患者は現代の遺伝子情報による予測医療のアプローチを過大評価している。技術的に大きな能力があると推定している。(これに関しては、専門家がしっかり現状を常にわかりやすくアップデートする必要があると感じる

この論文の限界

1. すべての報告が自己報告であり、バイアスにつながる可能性はある。

2. こうしたサービスのリクルート方法には、セレクションバイアス(健康に興味がある人が参加しやすいなど)が影響している可能性もある。
実際に、低教育歴、低所得(世帯収入が4,000USD以下はたったの参加者のうち16%のみ)であった。

3. 具体的な情報は手に入らないということ
この検査を受けた人がどれほど、将来の意思決定や習慣を変更したのかなど、(評価がしにくい)

最後に

こうした論文は日本ではまだ出ておらず、(Yahoo!は各都道府県からの参加者を実際の割合を同じになるように進めているというのは聞いたことがあるが、、、)今後の遺伝子検査サービスを意義を考える一種の情報になるので、早速報告したほうがいいと思う。可能であれば、行動変容がどの程度数値(血液検査データなど)を改善したか把握できるシステムがあるといい。

一方で、やはりこういったサービスがもっと有益になるような周知・教育やフォローアップ体制の確立は改めて急務であると感じた。


20170221
RF